厭世日誌

だなはのいせんじはみしなかみしるく

五月の風は生ぬるく冷たい

 
眠れない、あまりに寒い。寒帯の反対はなんだ。風が唸る。静かにしてくれたら、リンゴを漬けたブランデーを一杯分けてあげる、お願いだから責めないでくれ。どうして生き延びているのか、意地だけかもしれないな。どうして生き延びているのか、誰かの犠牲の上に立っているからだろう。呼吸をしてしまえば共犯なんだ、選択をしているのは自分だ。私が裏切るから世界も私を裏切るんだろう。騙された。こんな風だってわかっていれば参加しなかったよ。騙された?誰に。誰に騙されたんだ。どの口が言っているんだろう。半端に諦めるからそういうことになる。求めるのをやめれば楽になるだなんてことくらい、知ってるから、知ってるから責めないでくれ。嗚咽を隣できいていてくれればそれだけでいいんだ。心配なんか一つも要らない、私は生きていける。心配は心労か、なら、尚更だよ。承認欲求。迷惑なんてかけないから、見捨てないでくれ。というところまでグルグル考えながら屋上で星を眺めていたら滑り落ちそうになった。
右手のウイスキーが少し溢れて、無性に悲しくなって少し泣いた。
そうしてすぐに涙を流していることに羞恥を感じ、部屋に戻ると、カラスが一羽ベランダから項垂れる私に、「おい大丈夫か」、と、声をかけてくれた。
朝だ。
人々は今日も素知らぬ振りか。
暑くて外に出たくない。
汗が額から滲んで、毛布に染みていく。
寒い。
吐き気がする。