厭世日誌

だなはのいせんじはみしなかみしるく

斑猫の悪計

家から駅前まで歩いて15分ほど、仕事以外では滅多に外に出ることはない。駅周りはいつだって酔っ払った若者たちが騒いでいて出向く気にはなれないし、それを除いても、駅前は人で溢れかえっている。人が多い場所は苦手だ、だから私は部屋で蹲る。

断酒を始めてから殆ど人と関わる事も無くなって、それこそ仕事くらいでしか人と関わらなくなって、けれどやっぱり人と関わるのは苦痛で、段々と、恋人すらも、怖くなってきた。彼に悪意なんか微塵も無い。ただ私が自己嫌悪を拗らせて怖い、怖いと宣っているだけだなんて、痛いくらいに、自分でも理解している。勝手な被害妄想に付き合わせていると自覚する度に、申し訳なさで消えてしまいたくなる。

「もし私が死んだら、遺書はケータイのデータに残してあるから、よろしくね」と言うと、彼は「またそんな事言って」と少し笑いながら答えて、薬でぼうっとしている私に「もう寝たほうが良いんじゃあ無いの」と声をかける。そんな毎日。

ハルシオンを飲んで記憶を無くして、ラボナを飲んで、ストンと眠る。起きたらベタナミンリタリンを飲んで、どうにか仕事をする。そんな、毎日。

薬を飲んで、せめて人並みになれればいいのに。薬を飲んだって、人並みにはなれない。

とは言え、薬で頭を麻痺させれば楽だから、そうやって、自ら現状維持を望んでいるのかも知れない。アルコール依存症の名残みたいだ。私は脳みそで遊びすぎたのだろう。人間以外の何かに依存しなければ生きていけない性分なのだろう。

ああやっぱり、私自身が「変わる」事なんて望んでいないのだから、きっと、一生、このままなのだろうな。