厭世日誌

だなはのいせんじはみしなかみしるく

羽蟻

 
何も届かない場所は気が楽だった。その数日ももう、終わってしまう。明日からは仕事が始まる。
 
嫌わないでくれ。
酒を飲むのをやめろというのなら、今度こそやめよう。流れ出るのは青い血がいいというのなら、絵の具でも流し込むから、お願いだから誰も嫌わないで。どこにも誰もいない、一人の夜は怖すぎる。
なんちゃって〜うそぴょ〜ん。
 
夕日の映る電車の窓を羽蟻が登る様を見ていた。
硝子の表面は滑らかだ。羽蟻は数センチ登ったかと思うとすぐに滑り落ちてしまう。
滑り落ち、尚、上へ上へと向かおうとする羽蟻は何のために窓を登っているのだろう。