厭世日誌

だなはのいせんじはみしなかみしるく

「待たない」

年が明けた。変わったことは一つもない。
昨日と変わらない今日の連続。今日と変わらない明日の連続。

冬の空気は当たり前に冷たく、非日常が日常だった頃を思い出したりして、煢然たる気持ちになったりなんかする、けれど、それも毎年の事だ。
行き交う人々の吐く白い息が、酔っ払いたちの楽しげな笑声が、雑踏に踏み込めない自分をどうしようもなく責め立てる。
駅からの帰路、靴紐を結ぼうと屈んだ時、悴んだ自分の手に漸く冬を感じて、何と無く、手を擦り合わせた。

煙草に火を点ける。
「例えば、水溜まりに反射した雨粒が、染み込んで消えるように。」
煙草の煙が、目に染みる。
「例えば、あの大きな観覧車の行方を、早送りで見ようとしたように。」
発砲音。
「言葉の中に、本当があるか分からないのに嘘は必ずあるから、大切に想って欲しい。」
発砲音。

今年こそは、おやすみだなんて言洩らして、未来やその他、嫌いな物から逃げ出すように、優しい死に方をしたい。
明日の明日、そのまた明日。
明日までに変われない癖して、いつになったら変われるというのだろう。