厭世日誌

だなはのいせんじはみしなかみしるく

六月最後の夜に

疲れが重なっている。右腕が上がらない。早朝に吐き気で目覚めて、それからは一睡もできなかった。

ランプに積もる、埃みたいな日々。窓から微かに入ってくる、冷たい風が心地よい。湿度が高いと自分に黴が生えてしまうのではないかと心配になる。多分まだ大丈夫。しなければならないことが山ほどあるうちは。

この時期はドライボックスの中身が心配で、何度も湿度計を確認してしまう。カメラに黴が生えるのが一番怖い。たまにはフィルムカメラも持ち出して使わないと。やっぱり眠剤を飲んだ後はどうしても文章が支離滅裂になる。うっすらと破裂音もする。どうしようもないのだと思う。声は今日は聞こえない。右腕が痛い。夜眠る前に必ずお香を焚くこと。(ただし、風邪の時は焚かなくともよい。)瞼が重い。キッチンから、食器を洗う音が聞こえる。食器同士がぶつかる音。水がシンクにぶつかる音。音。私はそれをきいて、なぜか少し寂しくなる。部屋に迷い込んだ蜘蛛みたく。蜘蛛、蜘蛛は優しいとブローティガンは書いていた。すべての優しい蜘蛛たちよ。わたしもそう思う、少なくとも、心ない人々に比べたら、それはもう、はるかに。どうしてこんなことを言うのだろう、どうしてこんなことを言ってしまったのだろうの繰り返し。ぼくらは何も学んじゃいないんです。ぼくら、ただ愚かしくも人間の、いや、神様の真似事をしているだけなんです。赦してください。ますか?かなしいかなしい人間です。人間なのでしょうか。人間でなければ、なんなのでしょうか。誰か教えてくれませんか?わたしはもう、眠たいのです。歩く音。廊下を歩く音がする。雨に濡れた道路を車が走る、音もする。ハードディスクの点滅するあおいライト。デスクのランプ。少し明るすぎるランプ。パソコンの、液晶の光。今井三絃の天竺と馬脚を聴いている。私を私がみている。俯瞰の私は私なのだろうか。わたし、わたし。もうダメみたい。おやすみなさい、また明日。八百万匹の蝶々。