ずっと、どこへも行けない気がしていた。
存在が希薄になっていく感覚。いつもの。
頭では「そんなことない」とわかっているのに、心だけが立ち往生する。ありきたりすぎて、滑稽ですらある。
鞄に薬を押し込んで、夜の多摩川へ向かおうとした。
ただ誰かに止めてほしいだけなのか、終わらせたいのか、わからなかった。
冷房が効きすぎたこの部屋の空気を吸うたびに、胸の奥までひりついて、今・この世界・視界・感覚の境界がほどけて溢れていった。
笑い飛ばしてほしい。
部屋を満たしたあさのひかりは、何も告げなかった。
鳥の声が遠くに聞こえた。
少しだけ救われたような気がした。
犬の目で世界を見てみたい。
眠れなかったことだとか、約束とか、ルール。忘れずにいたい。